Case対応事例
相続人と第三者に対する包括遺贈による登記のケース
『予備的受遺者(次順位で遺産を受取れる者)への登記』
被相続人 甲
法定相続人 A・B
第三者 C・D・E(Bの子。甲の孫)
遺言執行者 A
甲は,一切の財産をA:12分の3,B:12分の6,C:12分の1,D:12分の1,E:12分の1、の割合で相続させ,又は遺贈するとの包括遺贈形式の公正証書遺言を残しており,一切の財産には,土地1筆(単独所有),建物1棟(2分の1所有)の不動産が含まれていました。
実は,この公正証書遺言は,本来遺言者の妻が一切の財産をを取得する,という内容でしたが,妻が遺言者よりも先に亡くなった場合の内容が定められておりそれが上記の内容だったのです。もともと遺産を受取る者が先に死亡した場合の,次に定められた遺産を受けとる者を「予備的受遺者」といいます。
本件では,ABCDE間の仲が良く,話し合いの結果,不動産を含めた一切の財産を,Aの名義にすることにしました。
この場合の登記手続はやり方が複数あります。私もハッキリと即答できない案件であり法務局との協議を行った結果以下の方法がありました。各地域の法務局では取扱いが異なる可能性はありますし,これら以外の方法もあり得ると思います。
<登記手続:その1>
①土地および建物について甲からCDEへ,遺言書を使用して「遺贈」を原因とした「所有権一部移転」「甲持分一部移転」登記。
②土地および建物について甲からABへ,遺言書を使用して「相続」を原因とした「甲持分全部移転」登記。
③土地および建物についてBCDEからAへの「売買or贈与or持分放棄」を原因として「BCDE持分全部移転登記」。
<登記手続:その2>
①ABCDEで遺産分割協議を行っても原因が遺贈と相続で異なるため一度CDEに遺贈で登記。
②次いで,ABに「相続」で移転登記し共有とする。実体法上は第三者も相続人の地位に就くが手続き上はどうしても別の申請となる。その後,
③遺産分割を原因としてAの1人にする。添付書面は,CDEを含む5人の遺産分割協議書,包括受遺者が民法上相続人と同様の地位にあるからこそ遺産分割協議ができることを示すすため公正証書遺言書。
<登記手続:その3>
ABCDE全員の同意で,遺言書を考慮せず,ABのみでの遺産分割協議書を作成し通常通り「相続」を原因とした相続登記。
法務局としては,遺言の有無は分からないことから,書面が整っていれば手続きを行うためCDEが出てこなくても登記は通さざるを得ないようです。登記官には形式的審査権限しかないこと,遺言書は絶対的なものでもないことからこのような取扱いも有り得るということでした。
※ この方法でも登記は通るのでしょうが,実態とは異なるため,後日紛争の原因ともなり得ますので注意が必要です。