Case対応事例
亡くなった親の借金の催告書・請求書が届いたケース
『借金があるなんて全然知りませんでした』
私は,相続手続き関連の相談に多く携わっていますが,亡くなられた親が借金を負っていたことを知らない相続人の方は多くいらっしゃいます。
一般的にも,親の財産の状況を詳しく知っている息子・娘さんは少ないのではないでしょうか。
亡くなられた父親が,何か,事業をされていた場合,会社の借入の保証人的な立場で債務を負っていることはある程度予想ができるかもしれませんが(父親名義の不動産の登記情報を調べれば,根抵当権などの担保が付いていることが確認できたりします),普通に会社勤めでサラリーマンであった場合,債務を負っているとは容易には想像できないと思います。
したがって,親が亡くなりしばらくして,債権者から催告書や請求書,相続を今後どのように行っていくのかのアンケート用紙などが送られてくれば,相続人の方々は大変驚かれます。
この場合,債務の額がいくらなのか,その債務を相続人が支払ったとしても不動産や預貯金等のプラスの財産の方が多いため得なのかを見極める必要が出てきます。
借金があったからといって,すぐに相続放棄手続きをしてしまっては,後々に不動産や誰も知らなかった定期預金等のプラスの財産が出てきたときに取得できなくなってしまうため大変です。
そこで,相続放棄をするか否かを決定する前提として,遺産の調査をする必要が出てくるわけです。一般的なご家庭ですと,不動産の名義や預貯金の通帳の在りかはすぐにわかることが多いと思いますのでそこまで苦労は無いと思います。しかし,亡くなった親と長年疎遠になっているような場合は財産状況が全く分からないですし,他の相続人が通帳などを持って行ってしまっているケースもあり,なかなか遺産の全容を解明するのが容易ではないこともあります。
このような場合,目星を付けた金融機関に行き,相続人であることを戸籍等で証明し,亡くなった親の口座がないかを調べてもらい,口座が見つかった場合には,亡くなった際の預金残高や,死亡間近の期間の出金と入金の履歴推移表等を出してもらうなどして地道に調べていくしかありません。
もし上記のように遺産の調査に時間がかかってしまい,相続放棄手続きが可能な3ヵ月を経過してしまいそうであれば,裁判所に対して,「3ヵ月の熟慮期間の伸長の申立て」を行い,期間を延長し遺産調査を継続することができます。
『借金があるなんて全然知りませんでした』という相続人の方は,パニックになってしまう事も多く,『早く手続きをしてこの状況から解放されたい』と思ってしまうのも当然ではありますが,マイナスの財産である債務だけを気にするのではなく,不動産や預貯金などのプラスの財産が存在する可能性も考慮し,遺産の状態を明らかにしてから相続放棄手続きを行うべきだと考えます。