Case対応事例
ご夫婦そろって公正証書遺言を作成されたケース
『子の1人が障がいを有しており,土地が夫・建物が妻名義になっているため将来が不安でした』
相続開始後の売却を見据えて
ご依頼を頂いたご夫婦には,2人の娘さんがいらっしゃいましたが,長女の方が知的な障がいを持たれており財産の処分や契約等についての判断能力を十分有しない状態であるとのことでした。
ご夫婦が居住中の不動産は,土地が夫名義で,建物が妻名義となっておりました。お二人が亡くなられた場合,2人の娘さんは不動産を必要としていない状態であったため空き家になる可能性が高く,売却してからその売買代金を2人で分けた方が良いというお考えを持たれていました。
通常の相続手続では,遺言がなければ,相続人間で遺産分割協議を行う必要が出てきます。本件で言えば,娘2人が遺産分割協議を行い不動産についての分け方も決める必要があるのです。しかし,前記のように長女の方が財産の処分について判断でいない状態であるため遺産分割協議ができない若しくは難航する可能性が高くありました。
遺産分割協議が不可能な場合,遺産分割調停や審判といった裁判所を通しての手続が必要となります。さらに,その裁判所での手続を行うとしても,障がいを有する相続人のために,特別代理人の選任や成年後見制度の利用といったことも出てくるため,費用と時間が相当かかってしまいます。
遺産分割協議が進まない場合,不動産の名義はそのままにするしかなく,相続登記はできず,また,売却することもできません。長女の方の入院費用などを捻出するためにも不動産を売却する必要があったため,この事態を回避しなければなりませんでした。
そこで,お2人そろって,二女に不動産を相続させる旨の遺言書を作成することにしました。
ポイント 障がいを有する子のために死亡後相続人から売却する場合
- 遺言書がなければ,相続人間で遺産分割協議が必要となり,協議が整わない場合「遺産分割調停申立て・審判」の裁判所を介した手続きでなければ解決しない。
- 障がいを有する相続人のために特別代理人の選任や成年後見制度を利用する必要が出てくる。
- 遺言書を残すことにより,特定の相続人に不動産の名義を変更することができ,その者から売却手続を行うことができる。